皆さんこんにちは、横浜市肛門科のららぽーと横浜クリニックです。
今回は痔の中でも特に20~40代の女性に多い「裂肛の重症度」についてお話しさせていただきます。
裂肛については以前もご紹介したので、簡単に振り返りながら重症度について見ていきましょう。
「裂肛」は便秘で硬い便が出たり、トイレで長くいきんだり、勢いよく出る下痢などによって肛門の出口周辺の皮膚が裂けて傷が生じる病気で、「切れ痔」や「裂け痔」とも呼ばれます。この裂傷は、便秘や下痢といった通常よりも硬いまたは軟らかい便が肛門を通過する際の強い刺激によって発生します。裂肛の64%は慢性便秘によるもの、約5%は下痢で発症していると報告されています。
裂肛を発症する割合は2:3で女性に多く、男女ともに若年者に多く見られます。
女性が多いのはダイエットなどにより食事の量が少なくなる傾向にあるため、便の量が少なくなるため腸の働きが鈍くなり、男性よりも便秘の人が多いことが原因とされています。
では、簡単に症状についても振り返っていきたいと思います。
裂肛の傷からの出血量はあまり多くありませんが、便が傷を擦るように通過する為排便時に激しい痛みを伴うのが特徴です。
また、怖くなってその痛みを避けるために便意を我慢して排便の機会が減ると、さらに便秘が悪化して傷の治りも悪くなります。治りが悪いまま慢性化した傷は、やがて組織が深くえぐれる潰瘍と化して肛門を狭め、ますます便が通過する際の刺激が強くなるという悪循環に陥ります。早期に適切な治療を開始しないと重症化しやすいので、予備知識をもっておくことが大切です。
ここまで、裂肛はどんな病気なのか、症状を振り返ってきました。では、ここからが本題です。「裂肛の重症度」とは一体どのように分類されているのでしょうか…
裂肛は急性期と慢性期に分類され、
重症度に応じて、急性裂肛、慢性裂肛、肛門狭窄の三段階に分けられます。
この進行度で治療方針が決まるのです。詳しく見ていきましょう。
◆急性裂肛……重症度は軽度!
硬い便をしたときに一時的に切れる急性裂肛は裂肛の中で最も多い症例です。
(症状)排便時に肛門の入り口が切れて、紙に少量の出血と痛みが見られます。また排便後にもジーンとする痛みや違和感が続きます。
(治療)軽症で浅い裂肛なのでまず薬物療法を行います。食事療法や便秘薬などで便通を整えたうえで軟膏や座薬を使えば、多くの場合、治癒します。
急性の段階で手を打てば薬だけで治すことができるので、放置せずに治療を開始することが重要です。
◆慢性裂肛……重症度は中等度!!
裂肛が治らず長時間が経過すると、今度は慢性裂肛になります。
(症状)裂肛は深い潰瘍となり、周囲が腫れて隆起し、肛門の外へ脱出してしまう「見張りいぼ」や肛門の中で大きくなる「肛門ポリープ」ができます。潰瘍には便などが貯留しやすく、炎症が反復し、常に強い痛みを訴えるようになります。長期間にわたり慢性化すると傷が硬くなり肛門が徐々に狭まってくる原因に繋がります。
(治療)薬だけで治る可能性は急性裂肛と比べると低くなります。通常は3ヶ月ほど薬を使って、改善しない場合は、狭くなっている肛門を少し拡げる手術を考慮します。
◆肛門狭窄……重症度は重度!!!
長年切れたり治ったりの慢性裂肛を繰り返し、放置していると、肛門ポリープや見張りイボのまわりの皮膚は硬く伸びにくくなっていきます。それにより肛門自体が狭くなり、同時に肛門括約筋が緊張し、開きにくくなります。この状態を肛門狭窄といいます。
(症状)肛門が狭くなることにより、便意があるにも関わらず便が出にくくなってしまったり、出る便が細くなる。便をすると肛門が傷ついてしまうということが挙げられます。
(治療)長年放置して鉛筆も通らないような細い肛門になってしまうこともあります。ここまで重症化すると肛門を拡げる手術をしないと治すことはできません。
裂肛の手術には、
……が挙げられますが、いずれも当院では日帰り手術が可能です。
裂肛は早期治療が何より重要です。急性のものであれば病院を受診して、処方される薬で治ってしまいます。しかし、裂肛を放置し慢性化すると、手術が必要になってしまうこともあります。
もし思い当たるような症状があれば、早めに肛門科を受診しましょう。また、肛門から出血がある場合には大腸癌の可能性も考慮しなければならないため、大腸内視鏡検査が必要になってきます。
裂肛にならないための対処法として、普段から食物繊維や水分をしっかり摂ってお通じを良くすることを第一に、腸内環境を整える食生活を意識しましょう。毎日適度な運動をして血行を良くし、ストレスを溜めないリラックスした生活を心がけることが、裂肛の予防や改善へとつながります。
当院では肛門科の診察や痔の日帰り手術、そして大腸内視鏡検査も行っていますので、痛みや出血がある、肛門が狭くなっている気がするなど、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。