痔核の手術に「PPH法(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)」というものがあります。
ヨーロッパで開発され、日本では2000年から主に肛門専門病院で行われるようになった、自動縫合器による痔の新しい手術法のことです。以前はLongo法と呼ばれていましたが、日本ではPPH法として既に一般的になった印象です。
従来の痔の手術は、「はさみ」や「メス」を使って肛門の皮膚より肛門粘膜内へ切り込んで、発達した静脈瘤(痔のことです)を削ぎ落とす方法でしたが、
・術後の痛みがある
・消毒の手間がかかる
・完治に時間がかかる
という課題がありました。
そこでPPH法は、特殊な「専用器具」(自動吻合器)を用い、肛門管内の痛みを感じる神経のない直腸粘膜部分を環状に切除してから粘膜を吻合します。
痔核を吊り上げることになるので、手術直後には痔自体は残っていますが、肛門内に収まることになります。
そして、血流が遮断されることになるので痔核は徐々に小さくなります(約1ヶ月で縮小)。
・・・・痔を「切除する」という従来の発想から「吊り上げる」という発想転換が素晴らしいですね。
PPH法の特徴は
・痛みが少ない(最大の特徴)
・回復が早い
・日常生活の排便に支障ない
・術後がきれい(傷跡が残らない)
などがあります。「痔の手術はとても痛い」という時代は、手術法と術後管理の発達によっていまや完全に過去のものになろうとしています。
痔の手術法には、「切除」以外にも「PPH法」「ジオン注射」という方法もあります。
どの手術方法が最も適しているのかは、患者さんぼ病状で異なります。
例えば、今回のPPHについては、
・痔が肛門の全周にわたる症例では、効果的な手術になるでしょう。
・逆に、痔の肛門外への脱出が大きすぎる症例ではPPH法を行っても肛門内に痔が戻りきらないでしょう。
・肛門の一方向に偏って、痔核が偏在しているケースでもPPH法の適応にはなりにくいでしょう。
治療法の選択にはトータルバランスが重要です。
そのような意味では、最適で常識的な手術術式の決定のためには、熟練した専門医の診察を受ける必要があるということです。