「痔が注射一本で治る!!」・・・本当なのか!?私は数年前に初めて「ジオン注射」のことを聞いたときには疑問に思いました。
最初に結論を書きます。
・ジオン注射は「いぼ痔」に対する注射です。
・全ての「いぼ痔」に適応になるわけではありませんので、専門家の判断が必要です。
・ほとんど痛みなく「痔が注射一本で治る!!」のですが、再発率は15-20%/年で、切除する手術と比較すると高率です。
今回は
「日本人の多くがひそかに悩む痔を根治手術なしで簡単に治せます。しかも、保険治療が可能です。」
と宣伝されている痔の注射療法、「ジオン注射」についてです。
(参照)痔核(いぼ痔)に対する注射(ALTA療法)
ALTA注射療法では、「硫酸アルミニウムカリウム」と「タンニン酸」を有効成分とする強力な硬化剤(ジオン)を痔へ直接注射することによって治療します。少し専門的になりますが、具体的な手順としては以下の通りです。
①ジオン投与前に局所麻酔もしくは仙骨硬膜外麻酔を行い、肛門周囲を緩め注射しやすくします。
②一つの痔核に対して4カ所(上極部粘膜下層、中央部粘膜下層、中央部粘膜固有層、下極部粘膜下層)に分割してジオンを局所注射します。
③しばらく点滴を行い、麻酔の影響がなくなるまで安静にします。
・・・注射すると、痔へ流れる血液の量が減り出血が止まり、痔の組織が固定化されて脱出(脱肛)も軽くなります。
これまでの臨床試験では、脱出の消失94% 排便時の出血消失94% 痔核消失58% 再発率では1年後16%という好成績です。
しかし、「ジオン注射」にはデメリットもあります。
・全ての痔に対して、ジオン注射が適しているとか治せるとかいうものではありません。
・大概の臨床試験は適応を慎重にすることによって、成績良く書かれているものですので、今回の臨床試験についても割り引いて考える必要がありそうです。
・再発率については臨床試験では「1年以内の再発が16%」であり、切除する根治手術と比較すると高率です。
・・・・つまり、今までの根治手術と比較して良い点、悪い点、適応の違いがありますので、それらを専門家が天秤にかけて治療する方針を決定するほうが良いということです。
手放しでは喜べませんが、痔の治療の有効な選択肢が増えたこと自体はうれしいことです。様々な側面を持つ「ジオン注射」ですが、「1年以内の再発が16%」という数字はある意味、立派な数字だと思います。
専門家による判断で行えるのなら、私は大いに素晴らしい治療であると思います。