ここの病院は、いつも行っている病院よりも医療費が高い!!・・・お会計の際に、そう不満に感じたことはありませんか?・・・そもそも、医療費はどのように決まるのでしょうか?病院ごとに決めているのでしょうか?
いえいえ!!違います!!!
医療費(=診療報酬)は、厚生労働大臣によって決められています。同じ規模の医療機関で、全く同じ検査をし、全く同じ処置内容を行ったのなら、日本全国どこでも同じ料金になるのですよ。
「病院の規模」は入院できる一般病床の数によって分かれています。分類としては、診療所(ベットの数が19床以下)、病院(ベットの数が20床以上200床未満)、ベットの数が200床以上ある病院・・・と、分れているんですね。「診療報酬」いう言葉は普段、診療所や病院など何気なく使っている言葉なのですが、こんな取り決めがあるとは驚かれる方もいらっしゃるでしょうね。
↑こちらの【診療点数早見表】ですが、この約1000ページにも渡る分厚い冊子に診療費についての取り決めが詳しく書いてあります。診療報酬は2年に一度大改訂が行われます。今年の4月はちょうどこの大改訂の年でした。そして、今回は、『診療報酬改定で当院はどのように変わるのか?』ということについてお話ししたいと思います。
診療報酬改定は、医療機関の診療に対して健康保険組合から支払われる報酬の改定で、物価や人件費などの動向に応じて、ほぼ2年に1度、行われています。診療報酬は1点=10円で換算され、すべての医療行為について点数が決められています。診療報酬を改定する際は、中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働大臣の諮問機関)の議論を踏まえて、国の予算案を作成する際に、まず診療報酬全体の平均改定率が決められます。その後、個々の診療報酬の点数についての中医協の答申を受け、最終的に厚生労働大臣によって決定されます。この改定によって点数自体が変動する項目があるのはもちろんのこと、新設される項目や逆に削除される項目もあるくらいなので、医療機関を初め各診療報酬に携わる機関全てがこの時期、てんやわんやの時期を迎えるのです。さて、今回2012年4月の改正で当院にとって大きく変わる部分の代表的なものが、複雑痔ろう根本術の点数の増加です(ちなみに単純痔ろう根本術の点数は変わりません)。
そもそも痔ろうとは
肛門が化膿した「肛門周囲膿瘍」の方が、しばらく放置すると自然に排膿が起こって肛門の激しい痛み自体は消えるものの、かわりに肛門にやや固いしこりのみが残り、慢性的な「鈍痛」「異物感」「不快感」が続く、あるいは再度化膿するといったような経過が痔ろうの患者さんの典型的な症状経過でしょう。痔ろうは内痔や切れ痔と異なり、薬物治療は全く無効で、手術以外では治りません。
やっかいなことに痔ろうの手術(特に複雑痔ろう)は肛門科の手術の中では難しいものです。痔核や裂肛を手術して「再発した」とか「肛門が変形した」といったトラブルはほとんど起きません。しかし、痔ろうに関しては、経験豊富な医師が手術しないとこのようなトラブルがまれではありません。不幸にして痔ろうになってしまったら、とにかく「痔ろうの経験の豊富な肛門科」を受診することが最も大事です。
痔ろうには単純で浅いものから、複雑で深いものまで色々なタイプがあり、各々の病型によって「やるべきこと」と「やってはいけないこと」という明らかな区別があります。医師がこれをふまえた確実な手術を行うには大腸肛門科の専門病院で相当の修練を積む必要があります。これをわきまえない医師が手術を手がけてしまうと、「たれながし」の肛門をつくったり、再発を繰り返す恐れがあります。
仮に痔ろうを長年放置すると、ガンになることもあります・・・これは痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)と決定的に違う点です。痔ろう癌は一般の肛門癌に比べ、非常に悪性度の高いものです。専門施設ですと年に数例、痔ろう癌の方をみます。「肛門科にいくのはいやだ・・・・痔で死ぬわけでないし・・・」長年の間、一度も医師の診察を受けずに無駄に市販の薬を使いつづけた方がこのような不幸に遭います・・・・・。
複雑痔ろうと単純痔ろうの違い
ここで簡単に、複雑痔ろうと単純痔ろうの違いについて、解説できればと思います。痔ろうは膿が出た後には膿が通った道がトンネルになって残ります、これが痔ろうの管になります。初めは1本の単純なトンネルなのです。この時に手術をすれば簡単に治りやすいのですが、この痔ろうを長期間放置していると、以前に出来た痔ろうの管の入り口に下痢の時などに大腸菌が進入して炎症を起こして再び膿が溜まります。溜まった膿は出口を求めてお尻の中をトンネルと掘るように進んでいきます。以前に作ったトンネル以外にもどんどんお尻の中を掘り進んで行きます。そうすると以前は1本だった痔ろうのトンネルが枝分かれをして複雑なトンネルになってしまいます。これが複雑痔ろうです。
痔ろうの手術では、この痔ろうの管を取ってしまわないといけないのです。単純痔ろうなら1本のトンネルと取るだけで済みますが、複雑痔ろうになるとたくさんトンネルが枝分かれをしているので痔ろうの管を見つけて取るのが大変になります。こういった背景から、同じ痔ろう手術であっても単純と複雑とで保険点数の差があり、今回の改正においてさらに差が開き気味に設定されたのです。(当院は単純痔ろうも複雑痔ろうも日帰りで手術を行っています)
「病状に対して医療費が的確に設定される」という公明正大な保険診療制度の中で、当院は早期発見・早期治療から医療費削減まで、しっかりと診療していければと思っております。おしりの症状でご心配なことがある方は、ぜひ当院までお越しくださいね。